ヨルダンを代表する観光地のひとつ、死海(Dead Sea)。
塩分濃度が高く、体が浮くことで有名な場所です。
私も訪れる前は、死海について知っていたのはそのくらい。
でも実際に調べてみると、死海はただ「浮ける湖」ではありませんでした。
海面より400m以上低い場所にあり、普通の海の約10倍もの塩分を含み、魚の多くが生きられない特殊な環境。
さらに現在、死海そのものが急速に小さくなっています。
今回は実際に訪れたときの様子とともに、
死海がなぜこれほど特殊なのか、行く前に知っておきたい豆知識や注意点を紹介します。
そもそも死海は「海」ではない

死海は、ヨルダンとイスラエル・ヨルダン川西岸の間に位置しています。
名前には Sea とありますが、実際には海ではなく、海につながっていない塩湖です。
南北に細長く、ヨルダン川などから水が流れ込んでいます。
一方で、死海から外へ流れ出す川はありません。
この「出口がない」という特徴が、死海の特殊な環境をつくる大きな理由になっています。
なぜ死海はこんなに塩辛い?

一般的な海水の塩分濃度は約3.5%。
それに対して、死海は約34%。およそ10倍もの濃さがあります。
なぜ、これほど塩分が濃くなったのでしょうか。
死海には川から水が流れ込んできますが、外へ流れ出す場所がありません。
さらに周辺は非常に乾燥しているため、水は強い日差しによって蒸発していきます。
水は蒸発しても、そこに含まれる塩やミネラルは残ります。
水が流れ込む → 水だけが蒸発する → 塩が残る
この繰り返しによって、長い年月をかけて現在の高い塩分濃度がつくられてきました。
なぜ「死海」と呼ばれている?

Dead Seaをそのまま訳すと「死の海」。
少し怖い名前ですが、その由来も高い塩分濃度にあります。
塩分濃度があまりにも高いため、一般的な魚や水生植物の多くは生息することができません。
そこから「死海」と呼ばれるようになりました。
ただし、まったく生命が存在しないわけではありません。
高い塩分濃度に適応した微生物などは生息しています。
なぜ死海では体が浮くの?
死海といえば、やはり水面に浮かぶ光景。
実際に入ってみると、本当に力を入れなくても体が浮きます。
その理由も、大量に含まれている塩です。
塩が大量に溶けた死海の水は、普通の海水よりも密度が高くなっています。
水の密度が高くなるほど、人間の体を押し上げる浮力も大きくなります。
そのため、死海では体が沈みにくく、自然と水面に浮かぶことができます。
よく見かける、水面に浮かびながら新聞を読む写真も実際にできるもの。
知識として分かっていても、実際に自分の体が勝手に浮かび上がる感覚はとても不思議でした。
実は「地球上で最も低い場所」

死海には、もうひとつ大きな特徴があります。
湖面は現在、海面より約440m下にあります。
死海沿岸は、地球上の陸地で最も標高が低い場所です。
海抜0mより400m以上も下に巨大な湖が広がっていると考えると、かなり不思議です。
ヨルダン側から死海へ向かう道も徐々に標高が下がっていきます。
死海は長時間入らない方がいい

死海を楽しむうえで知っておきたいのが、長時間入り続けないことです。
一般的には15〜20分程度を目安に一度水から上がり、真水で洗い流すことが勧められています。
私は当時それを知らず、少し長めに入ってしまいました。
しばらくすると肌がヒリヒリし始め、死海の塩分濃度の高さを身をもって実感することに。
また、小さな傷があるだけでもかなり染みます。
直前の髭剃りやムダ毛処理なども、避けた方が安心です。
顔を水につけたり、目や口に水が入ったりしないようにすることも大切。
死海では泳ぐはNG。仰向けになって静かに浮かぶくらいがちょうどよい楽しみ方です。
死海名物の「黒い泥」

湖岸では、全身に黒い泥を塗っている人たちをたくさん見かけました。
死海のもうひとつの名物、Dead Sea Mud(死海の泥)です。
死海の水や泥には、マグネシウムやナトリウム、カリウムなど、さまざまなミネラルが含まれています。
古くから美容や療養の目的で利用されてきた歴史があり、現在も死海周辺にはスパやリゾートホテルが多くあります。
私も全身に泥を塗ってみました。
私が訪れた先では、泥に小石が混ざっていて痛かったものの、
全身泥だらけになってから死海に入るという体験そのものが楽しく、印象に残っています。
死海は古代から特別な場所だった

死海と人間との関わりは、最近始まったものではありません。
この地域は古代から、塩や鉱物、天然アスファルトなどの資源を得られる場所として利用されてきました。
また、死海の水や泥は古くから人々に利用され、現在まで続くスパ文化にもつながっています。
現在は観光地として有名な死海ですが、何千年もの間、人間がその特殊な自然環境を利用してきた場所でもあります。
そして今、死海が小さくなっている

死海について調べていて、最も驚いたのがこの事実でした。
死海は現在、急速に縮小しています。
大きな理由のひとつが、死海へ流れ込む水の減少です。9
主要な水源であるヨルダン川の水が農業や生活用水などに利用されるようになり、
死海まで届く水量が大きく減りました。
一方、乾燥した死海では大量の水が蒸発していきます。
つまり、
流れ込む水より、失われる水の方が多い状態が続いています。
その結果、死海の水位は長期的に低下し、湖岸線も後退しています。
過去数十年間では、年間約1m前後という速さで水位が低下してきました。
水が減ることで起きる「シンクホール」

死海の縮小によって起きている問題は、水位低下だけではありません。
湖岸周辺では、シンクホールと呼ばれる巨大な陥没穴が数多く発生しています。
死海の水が後退すると、地下に残っていた塩の層へ淡水が入り込みます。
すると地下の塩が溶け、空洞ができ、その上の地面が突然崩れることがあります。
これがシンクホールです。
かつて湖岸だった場所が陥没し、道路や施設などにも影響を与えています。
「死海」はこれからどうなる?

死海がすぐに完全消滅するというわけではありません。
しかし、現在の水位低下が続けば、今見ている死海と未来の死海が同じ姿ではない可能性があります。
私が訪れたときは、体が浮くことや泥を塗ることに夢中で、
死海が抱えている問題についてほとんど知りませんでした
ひとつずつ知っていくと、
死海は単なる「人が浮く観光地」ではなく、とても特殊な自然環境の上に成り立っている場所だと分かります。
実際に死海を訪れて
死海で体が自然に浮く感覚は、想像していた以上に不思議でした。
そして帰ってから死海について調べたことで、旅をしていたときには見えていなかった面白さにも気づきました。
何気なく見ていた水面の向こうに、何千年、何万年という時間をかけてつくられてきた特殊な環境がある。
さらに、その景色が今も少しずつ変化しています。
旅先について少し知るだけで、同じ景色でも見え方が変わる。
死海は、そんなことを改めて感じさせてくれる場所でした。
世界まき より
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