トルコ2日目。この日は、イスタンブールの美しい朝から始まりました。
教会、ガラタ塔、花にあふれたカフェ、トルコ式朝食。
街の華やかさに感動しながら歩いていたはずなのに、
ブルーモスクへ向かう途中で、思いがけない流れに巻き込まれていきます。
親切なのか、営業なのか、詐欺なのか。
その境目が分からなくなる、旅のリアル。
でも同時に、この日も私はたしかに人のやさしさに救われていました。
何が本当で、何が嘘か。。。
賑やかな街の真ん中に…
少し寄り道して立ち寄ったのが
Church of Saint Anthony of Padua(聖アントニオ教会)。
中は撮影禁止でした。
教会の中から聖歌が聞こえてきたのですが、それが思っていた以上に力強くて。
しかも、みんな身体を揺らしながらノリノリで朝から聖歌を歌っているんです。
実はこの世界一周の旅で、キリスト教の教会を見るのはこれが初めてでした。
街の真ん中にあるのに、ここだけ空気が少し違う。
観光スポットというより、信仰する人たちにとって大切な、静かに祈れる場所でした。
夜も長けりゃ、朝も早い街
カフェにも朝からたくさんの人が集まっていました。
コーヒーを飲む人たち。談笑する人たち。
夜遅くまで賑わっていた街が、朝になってもまた動き出している。
この街のエネルギーに驚くばかりです。
ラプンツェルみたいなガラタ塔
街を歩いていると、突然目の前に現れたのがガラタ塔。
思わず「ラプンツェルみたい」と声が出ました。
細長い石造りの外観と、少し幻想的な雰囲気。
まるで物語の中の塔みたい。
イスタンブールのシンボルのひとつで、
現在の塔は14世紀、ジェノヴァ人によって築かれた中世の石塔なんだそうです。
かつては見張り台や火の見櫓のような役割も果たし、
今では街を見渡せる展望スポットとして親しまれています。
入場券は30ユーロ。
営業時間を見ると、朝8時半から夜まで長く営業していて、
ここにも“眠らない街”イスタンブールを感じました。
ガラタ塔のまわりでは、
ヒジャブにキラキラしたドレス姿の女性やスーツ姿の男性にも出会いました。
おそらくウェディングフォト。
観光地でありながら、誰かの人生の特別な一日も、ここでは同時に流れているんだなと思いました。
街の何気ない風景が愛おしい
タクシーを待っている間、目の前にいた男の子が本当に可愛くて。
お母さんが電話している隙に、噴水の水でひとり水遊びを始めていました。
こういう無邪気さって、見ているだけで愛おしい。
お母さんからしたらきっと手がかかるんだろうけど、それでも可愛い。
その横には風船売りの人。
さらに少し歩けば、野良猫、野良犬、そしてまさかの税務署までおしゃれ。
イスタンブールって、観光名所だけじゃなくて、普通の街の風景まで絵になるんです。
【詐欺1の入り口】タクシーから流れが変わり始めた
タクシーに乗ると、ドライバーさんがいろいろ話しかけてくれました。
イスタンブールの街のこと、ブルーモスクのこと、日本のこと。
ブルーモスクに入るには女性はスカーフが必要なので、私はグランドバザールへ行きたいと伝えました。
すると「今日は日曜日だから閉まっているよ」と教えてくれたんです。
グランドバザールは日曜日と祝日が休業。行く予定のある方は気をつけてください。
でも「ブルーモスクの近くでも買えるよ」と言われ、そのままそちらへ向かうことに。
ここまでは、ただ親切な運転手さんとの会話でした。
でも、タクシーを降りた瞬間…………
待っていたかのように、声をかけてくる人がいたんです。
【詐欺の典型的な流れ】
「日本人大好き!岡村隆史知ってる?昔ここにきてテレビに出た」
「私の名前はキャプテン。ここでは有名人だよ」
その瞬間、私は一気に嫌な予感がしました。
このセリフ、インドのデリー空港で出会った詐欺集団と、ほとんど同じだったからです。
たぶんタクシーの運転手と何かやり取りしていたんだと思います。
気づけばそのまま連れて行かれて、家族がいるという場所に案内されました。
家族のもとへ案内されたかと思うと、そこはお店でした。
しかし、部屋の奥には食卓があり
「You have to enjoy with us. 一緒に楽しもう。」
「Your lucky day. 今日はラッキーな日だよ。」
そのまま流れるように席について
お母さんらしき人がいたから少し安心したのに、料理を出したらすぐ離れていってしまった。。。
相手のペースと勢いに完全に負けていて、気づいた頃には相手の思う壺にハマっていました。
気づけば男の人たちに囲まれていて何が起きてもおかしくない気がしていました。
少しでも気に触ることをしたら
ぼったくり額が膨らんで行くだけだと思いました。
なので世間話をしてトルコに興味があると好意を表すのに必死でした。
笑うことしかできなかった。必死の作り笑顔だった
笑うことしかできなかった。必死の作り笑顔だった
この時、夏目漱石の『虞美人草』の
「愛嬌というのはね、自分より強いものを斃す柔らかい武器だよ」
という言葉を思い出していました。
でも、あの時の私の笑顔は、何かを打ち負かすためのものではありませんでした。
こちらは明らかに弱い立場。
正面から勝てる相手じゃないと分かっていた。
だから、笑うことしかできなかった。それしか武器がなかったんです。
怖がっていることを悟られないように。
相手を刺激しないように。
いつもの笑顔とは全然違う、必死の作り笑顔でした。
表面上はにこにこしていても、内心はずっと怖かった。
「このあと高額請求されるのかな」
「どうやって逃げよう」
そんなことばかり考えていて、出してもらった食事もほとんど喉を通りませんでした。
唯一の癒しは猫
ここでの唯一の癒しが、この猫ちゃんでした。
ここにはお店で飼われている猫と、外から来る野良猫の両方がいるみたいです。
でもそのどちらにも分け隔てなく優しく接していて、ちゃんと餌もあげている。
そういうところを見て、トルコの人は本当に猫に優しいんだなと感じました。
親切と営業の境界は?
海外ひとり旅では、親切と営業の境目が分からなくなる瞬間が多々あります。
しかも相手が悪意むき出しじゃない分、余計に難しい。
でも今回のことで、自分の違和感をもっと大事にしようと思いました。
それでも、イスタンブールの街の美しさや、人のあたたかさまで嫌いになったわけではありません。
旅って、こういう“綺麗なだけじゃない現実”まで含めて、世界を知っていくことなんだと思います。
結局、ものすごいぼったくりに遭ったわけではありません。
私が学生だと知って、少し良心が働いたのかもしれません。
でも流れとしては、まさにトルコでよく聞く典型的な詐欺の入り口そのものでした。
そして、そこには値段が書かれた商品は何ひとつなかった。
流れによっては大損していた可能性も普通にあります。
今回の場合は、良心でご飯をたくさん食べさせてもらったのではなく、
最終的にスカーフ購入につながる“おもてなし営業”の一部
だったと見るのが自然かなと思います。
トルコ女性に救われた
やっと解放されたので、少し気持ちを落ち着けたくてベンチに座りました。
すると隣のベンチに、トルコ人の女性が座っていて、そのスカーフの巻き方がとても綺麗で。
せっかくなら本場の巻き方をしてみたいと思い、思い切って「教えてほしい」と声をかけてみました。
この巻き方には本当はピンが必要らしいのですが、私は何も持っていませんでした。
そしたら彼女が、自分が今つけていたピンを外して、そのまま私に使ってくれたんです。
なんて優しいんだろう。
しかも最後にはハグまでしてくれて、こんなに可愛いトルコ人女性とハグできて、それだけで少し幸せな気持ちに。
……ただ、完成した自分をカメラで見てびっくり。
丸顔の私には驚くほど似合わない。
むしろ丸顔がさらに強調されていて、自分でも失笑していました。
でもこういう現地の人のやさしさには、本当に救われます。
【詐欺2の入り口】同世代の少年が友達になりたそうだった
スカーフも本場の女性に巻いてもらって、見た目はすっかりムスリム風に整いました。
これでやっとブルーモスクに入れる、と思って向かったのですが、
入口で同じくらいの年齢の男の子に声をかけられました。
「今はまだ信者の礼拝中だから、観光客は入れないよ」
親切に教えてくれているように聞こえたし、その時は私もそう思いました。
でも、これも詐欺の入り口だったんです。
しかも相手は同年代くらいの少年。いかにも怪しい感じではありませんでした。
だからこそ、警戒心が少し緩んでしまったんだと思います。
今までも旅先で友達をたくさん作ってきたから、そこに違和感を抱くことはありませんでした。
でもその時、日本語を話せるトルコ人の方が異変に気づいて、声をかけてくれたんです。
私はここで、助けられることになります。
【詐欺2の助け船】現地の日本語を話せるトルコ人
助けてくれた彼が、その少年にトルコ語で「彼女とはいつから知り合いなんだ」と聞いたら、
少年は「おとといから」と答えたそうです。
でも私に日本語で「この人とはいつ出会ったの?」と聞かれたので、私は「今さっき」と答えました。
その時点で、話が噛み合っていない。
そこで彼は、
「あ、この人は怪しい、詐欺の流れ」だと気づいてくれたそうです。
しかも怖かったのは、その少年が一人では終わらなかったこと。
その場を離れようとすると、
「違う違う、俺らの客だ」「兄貴を呼ぶから待って」と言い出して、途中で年上の男性までやって来ました。
助けてくれた彼が「もう警察を呼ぶぞ」と強く言うと、少年の方は明らかに焦っていました。
もしあの時、私が一人で「もう帰ります」と言っていたら。
“兄貴”と呼ばれる何人もの男性に囲まれていた可能性もあったのかと思うと、本当にぞっとします。
こういう場面って、断るタイミングが本当に難しい。
特に女性ひとり旅だと、相手に軽く見られたり、押し切られたりすることもあるんだろうなと感じました。
悲しいですが、これが現実です。
もう人間不信。
でも正直、助けてくれた彼のことも、この時点ではまだ信用できませんでした。
だって、みんな会話の流れが似ているんです。
たしかに今、彼は助けてくれている。
でも私はもう、人そのものに疲れていて、ただただ一人になりたかった。
しかも彼によると、
だから今の私が一人になるのは、むしろ危ないとも言われました。
この状況では、しばらく彼のそばにいる方が安全だと思って、少しの間一緒に行動することにしました。
信用を取るための共通言語として“日本”が使われている
今回私が怖くなったのは、
信用を取るための共通言語として“日本”が使われている感じがしたからです。
本当に日本が好きな人もいる。
本当に日本に住んでいた人もいる。
本当に日本人の友達が多い人もいる。
でも同時に、それが観光客を安心させる武器にもなる。
だから混乱するんです。
純粋な好意なのか、信用を取るための手段なのか。
日本とのつながりを強調されればされるほど、私は逆に怖くなってしまいました。
トルコの警察との衝撃的な距離感
助けてくれた彼の話で印象的だったのが、警察との距離の近さでした。
以前、お金の入ったバッグを見つけて警察に届けたことがあったらしく、
その時に警察官に驚かれて、そこから仲良くなったそうです。
しかも昨日も友達を連れて警察署に行って、一緒にお茶を飲んできたと写真まで見せてくれました。
日本の感覚だと、警察署ってもっと緊張感のある場所。
友達に会いに行くみたいにお茶を飲みに行くというのが、すごく不思議でした。
さらに、友達がスマホの充電がなくなりそうになった時も、
「警察に友達がいるから」と言って、警察署に行って充電させてもらうこともあるらしい。
日本の警察の感覚とは、かなり違う。
だから街中で警察官たちが友達同士みたいに話しているように見えたのも、
あながち見間違いではなかったのかもしれないと思いました。
無料で餌やりが楽しめるSeven Hills Cafe & Restaurant
そんなこんなで、助けてくれた彼がおすすめだと言って連れて行ってくれたのが、
Seven Hills Cafe & Restaurant。
ここでは鳥に餌やりをしながら景色を楽しむことができます。
イスタンブールに来たら、個人的にはぜひ行ってみてほしい場所のひとつ。
ブルーモスクを背景に、とってもいい写真も撮れます。
お気に入りです。しかもこれ、無料でできちゃうのも嬉しい。
トルコでは「一人旅」と言わない方がいいらしい
まだブルーモスクに行けていないと話したら、そのままブルーモスクまで連れて行ってくれました。
その時に教えてくれたのが、トルコでの声かけ事情。
やっぱりトルコは、1日目から感じていた通り、本当にフレンドリーな人が多い。
街中でもよく話しかけられます。
でもその中には、いい人もいれば悪い人もいる。
だから、
「トルコに知り合いがいる」
「あとで彼氏と合流する」
そういうふうに言った方がいいらしいです。
一人だと分かると、
「危ないから案内するよ」
「一緒に行こう」
と近づいてきて、
今回のことで、私自身ももっと危機感を持つべきだったなと反省しました。
やっと辿り着いたブルーモスク
ブルーモスクは、正式にはスルタンアフメト・モスクと呼ばれる、イスタンブールを代表する歴史的モスクです。
17世紀、オスマン帝国の時代に建てられたもので、
内部を彩る青いイズニックタイルの美しさから、“ブルーモスク”という通称で親しまれています。
外から見ても十分美しいんですが、中に入った瞬間、空気がふっと変わりました。
さっきまでずっと張っていた気持ちが、その静けさの中で少しだけほどけていく感じ。
観光地でありながら、
今も祈りの場であるからこその静けさがあって、
ただ綺麗なだけじゃない、心が落ち着くような空気が流れていました。
しかもモスクの中には、猫ちゃんが普通に入ってきていました。
日本のお寺や神社ではあまり見かけない光景だったので、最初はちょっとびっくり。
でも、誰も追い払おうとしない。
ここにも、トルコの猫との距離の近さを感じました。
トルコのタクシーはメーターをいじる
そのあと、助けてくれた彼がたくさん写真を撮ってくれて、私たちはブルーモスクを出ました。
そろそろ帰りたいと伝えていて、ここでタクシーを呼ぼうと思ったのですが、
ここで判明したことがあります。
私はタクシー代をぼったくられていたみたいです。
だからきっと、タクシーとスカーフを買ったお店はグルだったんでしょうね。
助けてくれた彼いわく、
やっぱり、あの違和感は間違っていなかったんだなと思いました。
モスクの前には、お水を無料で配っている場所も
モスクの前には、お水を無料で配っている場所もありました。
暑い中を歩く観光客や地元の人たちに向けて配っていて、こういう優しさにも出会う。
ぼったくられたり、優しくされたり。
この日は、その両方を何度も味わう日でした。
パレスチナ連帯デモで通行止め、高熱でフラフラ
タクシーを呼ぼうとしたその時、広場ではデモが始まっていました。
内容は、パレスチナ連帯と反イスラエルの抗議デモ。
演説では、かなり強い口調でイスラエルの占領や抑圧を非難していて、
ここにいる人々にも抗議に加わってほしいと呼びかけていました。
ただの観光地だと思っていた場所が、一変して政治と宗教と怒りの交差点みたいになる。
かなり緊張感がありました。
しかもこの頃には、緊張続きでかなりメンタルが削られていました。
さらにこの時点で、私はすでに高熱。
もう本当にフラフラで、ただただ早く帰りたかったんです。
でも
ちなみに、
さらに、
一見、普通に参加している人に見えても、彼が「あの人もたぶん警察だよ」と教えてくれました。
やっと宿に帰れたと思ったら…… 最後までトラブル
電車でホテルの最寄りまで戻って、
彼が見つけてくれたタクシーに、値段交渉までしてもらって、無事に現地価格でホテルまで帰ることができました。
……が、ここでまたトラブル。
やっと部屋に着いたと思ったのに、鍵が部屋番号と合っているのに、なぜか開かない。
もうこの日は、本当に最後の最後まで何かが起こる日でした。
最後の最後まで、勘弁してくれって感じです。
散々な日の中にも、ちゃんと救いはある
全部がするするとうまくいく日もあれば、
なんでこんなにうまくいかないのって思う日もある。
でも、
そんな散々な日の中にも、ちゃんと人のやさしさがあって、
結局、どこかで救われてるんだなと思います。
この日のトルコは、
怖さもあったし、しんどさもあったし、正直かなり疲れました。
でも同時に、人のやさしさや、この街の美しさにも何度も救われました。
何が本当で、何が嘘か。
最後まで完全には分からないままだったけれど、
それでもきっと、旅ってこういうものなんだと思います。
綺麗な景色だけじゃなくて、綺麗じゃない現実ごと、世界を知っていくこと。
そんなトルコ2日目でした。
世界まき より

